離婚に伴う財産分与とは
「財産分与」とは、夫婦が婚姻関係を結んでいた間に築いた財産を、離婚するときに分け合うことです。
夫婦共同で購入した不動産、もしくは、結婚している間に購入した不動産は、どちらの名義であっても共有財産となりますので、財産分与の対象になります。
親からの相続した不動産、独身時代に購入した不動産は財産分与の対象になりません。財産分与の割合は、原則2分の1ずつとされていますが、実際は協議次第となります。
自宅をどのように分けるか
財産分与において、自宅を所有している場合、その時価が論点となります。
現金や上場株式などの金額がわかりやすく換金性の高い財産は特段問題とはなりませんが、不動産の時価は、客観的な交換価値が掴みにくい財産です。多くの方は、不動産会社の無料査定書を利用し、時価を把握します。
不動産会社の無料査定書の問題点
弁護士の先生も無料だからと不動産会社の無料査定を勧めるケースが多いようです。
また、インターネットでも「不動産 財産分与」で検索すると、一括査定などの不動産会社の広告がたくさん出てきます。夫婦がそれぞれ別の不動産会社に無料査定を依頼するケースもあるようです。
このようなケースでは、依頼者の考えを反映した査定額となる場合があり、それぞれの業者間で価格が大きく開くことも珍しいことではなく、分与額をめぐり争いが起きてしまいます。
無料査定書は、特段法律的な縛りはなく、査定価格がずれていようが間違っていようが、責任を取らされることはありません。
不動産鑑定士による鑑定評価書が有効
一方、不動産鑑定士による鑑定評価書は、国土交通省が定める「不動産鑑定評価基準」に基づき鑑定評価を行った不動産の適正価格を示した文書です。
鑑定評価書は公平性・客観性を具備しており、裁判所や税務署などに対しても公的な効力があります。無料の査定書より客観的で適正な資料とみなされますので、鑑定評価書を用いることで優位な立場となります。
鑑定評価書を使って分与額が100万円増えた!
夫が得するケース
夫婦ぞれぞれが別々の不動産会社に、ご自宅の無料査定を依頼しました。
査定額 A社:3,000万円 B社:3,500万円
協議の結果、両者の間をとって3,250万円を時価とみなして、夫婦5:5の割合で財産分与することとし、夫が妻に現金を支払うことになりました。つまり、夫は妻に1,625万円を支払います。
夫は不動産鑑定士に鑑定評価書の作成を依頼しました。不動産鑑定士による綿密な調査・分析の結果、3,000万円の鑑定評価書が発行されました。再度、財産分与額を計算すると、夫は妻に1,500万円支払うこととなり、夫の手残りは125万円多くなりました。

妻が得するケース
夫婦ぞれぞれが別々の不動産会社に、ご自宅の無料査定を依頼しました。
査定額 A社:3,000万円 B社:3,500万円
協議の結果、両者の間をとって3,250万円を時価とみなして、夫婦5:5の割合で財産分与することとし、夫が妻に現金を支払うことになりました。つまり、夫は妻に1,625万円を支払います。
妻は不動産鑑定士に鑑定評価書の作成を依頼しました。不動産鑑定士による綿密な調査・分析の結果、3,500万円の鑑定評価書が発行されました。再度、財産分与額を計算すると、夫は妻に1,750万円支払うことになり、妻の手残りは125万円多くなりました。

タダより高いものはない?
不動産会社の無料査定であれば無料で済みますが、両者の利害が対立し交渉が長期化することがあります。不動産鑑定士による鑑定評価書は有料ですが、客観的な交換価値を示す中立性・公平性を具備しており、交渉が有利に進み、上記のケースのように手残りが多くなることがあります。